bekkou68 の日記

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楽しく学び続けるための英単語

はじめに

MPPの英語学習勉強会 で英語で話した内容をもとに、日本語で文章としてまとめます。発表の趣旨は「自分が楽しく続けられている学習法の紹介」です。英単語・文法・発音の 3部構成でした。この記事では英単語について書きます。

この記事はスライドの16から49ページまでの内容をカバーします。きちんと伝えるため発表内容に (かなり) 加筆・修正を行っています。

言いたいことを一言で

英単語は語源で学ぶと楽しいですよ。

丸暗記はつらいよ

学校で英単語を学んでいたことを思い出してみましょう。きっと多くの人は単語帳を片手に赤シートを使って丸暗記をしていたことでしょう。自分もそうでした。

preview なら「下見, 試写会, プレビュー」、precept なら「教訓, 処世術」、accept なら「受け取る」…などなど。

頭のやわらかい学生時代には頭にはいるかもしれませんが、テストが終わったら忘れてしまうなど、あまり効果的な覚え方ではないなあと感じました。そして無機質な暗記は好きではなかったのでとても退屈に感じました。

大学の時に語源の学び方に出会い、自分の中の単語学習が大きく変わりました。

語源で学ぶってなんだろう

preview を例に説明します。preview は実はパーツにわけることができます。pre と view にわけられ、それぞれのパーツのことを語源を呼びます。語源には意味があります。pre には「前もって」という意味があり view には「見る」という意味があります。それらが合わさって「何かを前もって見る」というイメージが生まれます。

そのイメージからそれぞれの意味が生まれます。イメージしてみましょう。「下見」は「場所をイベント前に見る」ことで、「試写会」は「映画を公開前に見る」ことです。だから preview には「下見, 試写会, プレビュー」という意味があるのです。

語源を学べるサービスの紹介

preview, precept, accept においてその語源を学んでみましょう。自分は Gogengo! という語源学習を効果的に行うためのサービスをつくっています。

使い方を簡単にご紹介します。先のリンクからトップページに行き、preview のリンクをクリックします。すると先ほど紹介した preview の語源を段階的に平易な表現で知ることができます。さらに pre の語源を含む英単語を調べたければそのページの pre のリンクをクリックします。するとそれらの英単語を一覧することができます。precept の語源もそこに書かれていますね。さらに cept の語源を含む英単語を調べたければ cept のリンク をクリックします。そこで accept の語源を見ることができます。

Gogengo! で英単語と語源とを行き交う旅をすることができます。気になる英単語や語源があればどんどん辿って効率よく学ぶことができます。

Gogengo! 関連の情報
  • Gogengo! Bot: TwitterBot です。語源をランダムにつぶやきます
  • おもしろ語源: iOSアプリです。特に面白い語源をピックアップして解説してあります。またオフラインで語源を学べたり理解度チェックができます
  • Gogengo! User Group: 最近つくったユーザグループです。コアな情報があるかもしれません

語源で学ぶことのメリット

語源に英単語を学ぶと、単語の意味がなぜ生まれたのかを知ることができます。語源を印象づけることで覚えやすく忘れにくくなります。もちろん丸暗記と同じように、人は時間がたてば段々と忘れていきます。ですが丸暗記よりは忘れる速度が遅いのではないかと考えています。

そして初めて見る単語をなんとなく推測することもできます。prepaid という単語を知らなくても pre を知っていれば何となく意味が分かると思います。何か文章を読んでいてわからない単語に出会う。その時にまったくわからないのと、なんとなくでも推測できるのとではだいぶ違いがあると思います。

さらに語源は英語の歴史につながっていきます。たとえば company の語源は com「一緒に」pan「パン」y《名詞をつくる》で「一緒にパンを食べる間柄の集まり」と派生し「仲間, 会社」という意味が生まれました。キリスト教新約聖書には、イエスが賛美の祈りののちにパンとワインを弟子たちに与えた様子が書かれています。かの有名な『最後の晩餐』に描かれている食事風景はまさに仲間でパンとワインを嗜む様子が表されています。当時のパンを仲間で嗜む文化は company の派生に深く関わっているのです。歴史とのつながりを知るのは語源学習の楽しみ方の一つです。

語源で学ぶことのデメリット

言語全般に言えますが、英語も人間が考えた言葉です。英語は複雑なプロセスで組み上げられてきたので、数学の公式のように語源で完全に解説することはできません。いくつもの例外があります。たとえば同じつづりで意味の違う語源があります。include の in は内側へを意味し inactive の in は否定を表します。また in から始まる単語であっても語源 in で分解できるとは限りません。

語源で 100%の単語を効果的に学ぶことはできません。ただ 70%ほどは可能だと言われています。その 70%の多くはラテン・ゲルマン系に由来するとされ、複雑だったりアカデミックな単語が多いです。難しい受験問題を説いたり、論文を書いたり、専門的な本を読んだりするときによく登場します。医学の単語にはとても有効だと実感しています。たとえば肉単骨単といった一風変わった解剖学の本が出版されています。残りの30%は sky, queen といったシンプルな単語だったり、語源を調べても成り立ちが複雑でそれほど覚えやすくないものがあります。

すべての単語を毎回語源を思い出して意味を導出しようとすると反射しにくいです。特にスピーキングやリスニングでは反射が求められます。語呂合わせで学ぶときと似たようなデメリットですね。最終的には綴りをみたら意味がわかる状態にする必要があります。そのために語源をサポートとして使うといい具合で学べるのではないかと考えています。

語源って漢字に似ている

今まで英単語の語源について話してきましたが、ここで似たようなパラダイム (モノの見方) をご紹介します。

語源は日本語の漢字のへん・つくりに近いです。例えば木偏がある漢字は「木」に関連する意味が多いです。でも例外だったりイメージしにくいものも多々あります。ほら。けっこう似ていますよね。漢字を学ぶ際にへん・つくりで学ぶ外国人もいました。そうやって学んでいると聞いたとき、自分が学生の頃に漢字を学んだときは意識していなかったので新鮮に思いました。

蛇足ですが漢字の由来も面白いです。たとえば「道」という感じには「首」が含まれています。戦争のあった時代にさかのぼります。戦果を示すための生首を持ちながら「辶 (みち)」を歩いて帰る様子から「道」という漢字が生まれました。『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』や『白川静さんに学ぶ漢字は怖い』に詳しく書いてあるので興味をもたれたら読んでみてください。

語源を学び始めるには

さて、話を戻します。語源を学び始めたくなったとしても、語源は無数にあります。どれから学んでいったらいいのでしょうか。

特別な34の語源から学ぶのはひとつの方法です。それらは大学生の使うレベルの辞書のうち 14,000 の単語に含まれています。さらに、これらの語源は日本でいう広辞苑レベルの英辞書のうち 10万単語に含まれています。語源のパワフルさを物語っています。なお、この数字は語源学 (ethymology) を研究している James I. Brown 氏の PROGRAMMED VOCABULARY: THE CPD APPROACH に一部記載されています。

34の語源は Gogengo! の魔法の語源ページに記載されています。それぞれの単語をたどっていくと語源学習をはじめるとっかかりになるかもしれません。

自分は語源をどう学んでいるのか

いろいろなアプローチをしています。

  • わからない単語があったら調べてみて、覚えにくそうだったら語源を調べる
  • なんとなくこの単語はこの語源と関連しているんじゃないかなと仮説をたてて調べる
    • Online Ethymology Dictionary をよく見ています。英英語源辞典なので英語を英語で学びたい方にマッチすると思います
    • 歴史的な記述を見つけたりするとそれを調べて数時間こえることもしばしば 笑
  • 語源の本を読みます。シンプルに読み物として楽しめるものが多いです

Webサイトや書籍などたくさんの文献があります。ぜひ目をとおしてみてください。

まとめ

自分が最初に語源の世界に入ったきっかけは、なぜ、がそこにあったからでした。実際に学んでみると語源の世界に段々のめり込んできました。語源って楽しい! と語源を知らない人に言っても正直つたわりません。語源ってスルメに似ていて、噛めば噛むほど味が出てくる感じです。

誰もが語源の学び方を気にいるとは思っていません。丸暗記とかそれ以外のやり方でも大丈夫ならそれでいいと思います。自分自身が続けられるメソッドを見つけて続けることが大事です。

自分は丸暗記が苦手だし嫌いだったのでそれ以外のメソッドを必死に探しました。そして辿り着いたのが語源です。単語を効果的に、そして深く学びたい人にはよいアプローチだと考えています。選択肢の一つとして語源というものがあると伝われば幸いです。

おわりに

ということで単語編は以上となります。次は文法編を書きます。

間違えやご意見などありましたらコメントなどでお寄せください。